シャロースイング(シャローイング)とは? ①

シャローの定義、何が何に対してシャローなのか?

下回りスイングの定義を確認すると、広い意味の下回りスイングと、狭い意味の下回りスイングがあります。

(広義)切り返しで、自分から見てクラブを右回りにするスイング。後ろ倒しなどとも言います。

(狭義)練習器具のイメージシャフトさんが定義したスイングで、デリバリーポジションからインパクトにかけて、
・右手が下、左手が上
・グリップが前、ヘッドが後ろ
・井桁崩しを使うスイングです。

逆に、切り返しで、クラブが前(つま先方向)に倒れる前倒しスイングのことをスティープといいます。

色々な人が色々なことをおっしゃっておりますが、シャロースイングの定義を総合すると以下のようにまとめられるかと思います。

①切り返しからダウンスイングで、クラブヘッドがエルボープレーンの下側をおりてくる(エルボープレーンとは、飛球線後方から見て、アドレス時のボール(またはホーゼル)と肘を結んだ線)。もちろん、シャフトプレーンよりも上側をヘッドが通ります。

②ダウンスイングの前半で、ヘッドがグリップよりも低い位置を通ります(後々パッシブトルクを働かせるために、ヘッドとグリップの相対的な位置関係が重要となります)。

シャローイングは50年前のゴルフの教科書に書かれている

シャロースイングの定義について、その他の意見としては、以下のようなことをいう方もいらっしゃいます。

・クラブが爪先の方から上がって、カカトの方からループするスイングのことをシャローという(マシューウルフのようなスイング)、
・ダウンスイングで、左腕が地面と水平のポジションにおいて(P5)、飛球線後方から見たグリップエンドの延長線が、飛球線のアウト側を指す、
・切り返しで、ヘッドがカカト方向に倒れる、その事象のみがシャローである、
・切り返しで、右手がカカト方向に動けば、それはすなわちシャローである、 等々、皆さん好き勝手におっしゃっております (^^)

最近になって、シャローイングという言葉をよく聞くようになりましたが、大昔のプロ上級者の方も、今でいうところのシャロースイングをしておりました。1957年に発行されたモダンゴルフにも、シャロー(後ろ倒し)について明記されております。

「シャローをやめた」とおっしゃる稲見萌寧プロも、実際には、後ろ倒しのシャロースイングをされております。

シャローのメリット・デメリット

ゴルフ界でこれだけシャローが話題になるということは、何かしらのメリットがあるはずです。

結論としては、ヘッドスピードアップとフェース管理が向上する点があげられます。

シャロースイングは、パッシブトルクを使えるのが特徴の1つで、受動的にクラブに回転力が発生します。

シャローの定義の1つに、「ダウンスイングの前半で、ヘッド軌道はグリップの軌道よりも下側を通る」という話がありました。

ヘッド軌道とグリップ軌道にズレを作っておくことにより、クラブを引っ張った方向に重心が引き寄せられて、勢いが増すと、慣性の法則により引っ張った以上に重心が動き続けます。例えば、掃除機を引っ張ったら、本体が勢い余って転がってしまうような状況です。

この仕組を使うことにより、フェースが閉じる方向に回転します。

もう1つ、地面に対してゆるやかな角度でクラブを(文字通りシャローに)操作すると、クラブに水平方向に遠心力が働きます。

遠心分離機の中に入っていることを想像すると分かるかと思いますが、水平成分の遠心力により、クラブのトゥが外側に引っ張られていきます。それはすなわち、クラブパスに対してフェース面がスクエアになることを意味します。

逆に、スティープに振ってしまうと、遠心力が地面方向に働いてしまうため、フェースが開いてしまうことになります。

シャロースイングは、ダウンスイングの助走距離を長くとれる(ヘッドスピードが上がる)

シャロースイングのメリットは、フェース管理が容易になる点にくわえて、もう1点あります。

ダウンスイングの助走距離が長くなりヘッドスピードがあがります(飛距離アップします)。

切り返しから、螺旋階段状に、クラブを背中の方から回しておろしてくることで実現します。

一方、シャロースイングのデメリットはないと言ってもよいのかもしれません。

プロ上級者のほぼほぼ全員がシャロースイングをしておりますので、もし致命的なデメリットがあるならば、ここまで普及していないと思います。他の競技で、例えば野球のバッティングでもゴルフと同様に後ろ倒しのシャロースイングをしていることからも優位性があるといえます。

ただ、アマチュアの方で、大人になってからゴルフを始めた方にとっては、シャロースイングはとっつきにくいかと思います。

切り返しから、クラブをボールに対して一直線に向けていくのが普通の考えだと思いますが、背中の方から螺旋階段状にクラブを回すとか、直感に反する動きだと思います。違和感との戦いになる点がデメリットといえます。

野球打ち+シャットフェースが標準的なスイングである

大人になってからゴルフを始めた方が、「止まっているボールを打つなんて簡単なはず」と油断すると、残念なことに、たいていスライスが止まらなくなります。そうすると、小手先(ハンドレート)でスライスを解消しようとしてドツボにはまってしまいます。

片山晋呉さんがいつもおっしゃっておりますが、スライスを解消しようとして、手を強引に返してボールを打ってしまうと、ゴルフはうまくなりません。お気持ちは分かります。ボールが目の前にありますので、直感的に、切り返しから、クラブを前に倒して、右手を左手の上から(上回りで)ボールを打ちたくなります。

しかし、野球、テニス、ゴルフ、体の使い方は、基本的に同じはずです。もし違っていたとしたら、効率の良いスイング側に近づいていくはずです。

野球のバッティングは、後ろ倒しのシャロースイングをしております。野球もゴルフも体の使い方は基本的に同じですが、最大の違いは、バットが丸いか、ゴルフクラブにはフェース面があるかです。

ゴルフは、フェースをスクエアに戻さなければなりませんので、左手の猫パンチでシャフトを回す点が(ガンマトルク)、ゴルフスイングと野球のバッティングの相違点になります。