スライスの対策

腕と体の動きを4パターンに分類

スライスの主な原因は、カット軌道とフェースオープンですが、なぜ、カット軌道とフェースオープンになってしまうのか?

まずは、腕や体の動きについて、今一度整理します。

腕の動かし方が2パターン、体の動かし方が2パターンの組み合わせで、合計4種類のパターンに分類されます。

<腕の動き>
①上回り:右手を左手の上にして、手のひらで上から下にたたきつけるイメージ
②下回り:右手が左手の下になる。いわゆる シャロースイング。

<体の動き>
③クローズ:体を右に向けたままスイングする。
④オープン:体を左に開いてスイングする。

アマチュアの方は、①腕の回転方向が上回り、③体の向きがクローズの組み合わせになっている方が多いです。

プロ上級者の多くは、②下回り ④オープンの組み合わせです。

アマチュアの多くは、右手を上から下にたたきつけるイメージで振るため(①上回り)、クラブヘッドがアウトサイドインの軌道になりやすいです。

現状のスイングイメージ(①上回り③クローズ)のまま、精度を上げていくのもありだと思いますが、もし、②下回り④オープンのスイングにかえるのであれば、腕と体に分けて、じっくり修正にとりくんでください。

②下回り④オープンのメリットの1つに、アプローチとフルショットを同じスイングイメージで振れる点があり、それはスコアップにつながると思います。

腕の回転方向を下回り(右回り)にする

ゴルフスイングを、腕の動き(上回り・下回り)と、体の動き(クローズ・オープン)に分けて整理しましたが、腕の動きが上回りだと、アウトサイドインのカット軌道になりやすいです。

カット軌道を修正するためには、まずは、腕の回転方向を、下回りに変更する必要があります。

野球のバッティング、テニスのフォアハンドストローク、カウボーイの投げ縄 等、腕の使い方は下回りになっていると思います(切り返しでヘッドがカカト方向に動きます)。

クチで言うのは簡単ですけど、上回りから下回りにかえると、当て感が180度かわってしまいます。タオルや傘やテレビのリモコンでも、ちょっとしたスキマ時間にぐるぐる回して、下回り(右回り)の動きを実践して体になじませてください。

腰を開く(骨盤の回転、ボディターン、ヒップターン)

スライサーの方の多くは、切り返しでクラブヘッドが爪先方向に出てしまいます。右手が上の「上回りスイング」で、体の回転を止めてインパクトをむかえている方が多いです。

上回りは、アウトサイドインの軌道になりやすく、そのヘッド軌道の状態で腰を左に開くと、ボールが左に飛んでしまいがちです。下回りは、ヘッド軌道がインサイドアウトになりやすいスイングです。下回りができると、次は腰を開いて、体の向きを左(目標方向)にむけることができます。

腕の回転(下回り インアウト)と、腰の開き(アウトイン)を合成することで、インサイドインのボールが打てるイメージになります。

インパクト時のフェース角は、アドレス時よりも閉じる必要がある

アドレス時のフェース角を0度として、インパクトでフェース角を0度に戻したとしても、ハンドファーストになっていると、フェースが右を向いたままインパクトしてしまいます。

インパクト時のフェース角は、アドレス時のフェース角よりも閉じておく必要があります(左に回す必要があります)。

トッププロのインパクト時のフェース角は、アドレス時よりも、数十度クローズになっております。

左を回したフェース角と、ハンドファーストの合わせ技で、スクエアのインパクトを実現します。

グリップスピードが減速するとフェースが閉じる

フェースオープンを改善するためには、ガンマトルク(左手首の猫パンチ)が必要になります。しかし、スライサーの方の多くは、ダウンスイングで右手を左手の上に回して(手を返すことにより)、ヘッド(フェース)をスクエアにしがちです。

右手の親指を左に向けてフェースを返すのではなくて、右手の親指を右に向けたままシャフトを回すことで(ガンマトルク、左手首の猫パンチ)、フェースが閉じる方向に回転する必要があります。

また、インパクト付近でヘッドスピードをあげようとして、手元(グリップ)を加速させてしまう方が多いのがスライサーさんの特徴です。プロや上級者は逆に、インパクト付近で手元(グリップ)のスピードが減速します。

グリップを加速させると、慣性の法則により、ヘッドが置いてきぼりになりフェースが開きます。逆に、減速させると、ヘッドが目標方向に進もうとして、フェースが閉じます。

トンカチで釘を打つように、手首を柔らかく使って、インパクト付近で手元(グリップ)を加速させないように気をつけてください!

イボミプロ。グリップスピードが43.4%も減速している。
典型的なアマチュアのスイング。グリップスピードが全く減速していない。

水平方向の遠心力で、フェースをスクエアにする

クラブを振ると遠心力が発生し、ヘッド軌道の外側に向かって力が発生します。

インパクト付近で水平方向に遠心力が発生すると、トゥが、ヘッド軌道の外側(爪先方向)を向こうとします。それはすなわち、フェースがスクエアになることを意味します。

スライサーの方に多いカット軌道で、上から下にたたきつけるような上回りスイングだと(水平成分が少ないので)、遠心力が地面方向に発生してしまいます。

しかし、下回りのループ軌道にして、カカトから爪先方向への水平成分を多く含んだスイングをすると、爪先方向への遠心力の働きにより、フェースがスクエアになります。


逆ループスイングは地面方向に力が働き、ループスイングは、カカトから爪先方向の水平成分を多く含んだスイングであるため、遠心力が爪先方向に働く。

パッシブトルクでフェースを閉じる

パッシブトルクというのはここ数年で言われだした用語ですが、プロ上級者の方は、パッシブトルクという用語がなかった頃から、(おそらく無意識に)正しく使えていた技術です。

グリップを引っ張った方向に、クラブの重心(ヘッド)が、受動的(パッシブ)に引かれるのがパッシブトルクです。大事な点は、パッシブに引かれた重心(ヘッド)が、慣性の法則により動き続けるのがポイントです。

ダウンスイングにおいて、ヘッド軌道が、グリップ軌道よりもシャロー(インサイド)になっていると、ヘッドがグリップ側(アウト側、爪先側)に引き寄せられて、引き寄せられた勢いのまま慣性の法則により、ヘッドが爪先方向に動き続けます。

また、ダウンスイングで、ヘッドがグリップよりもアンダー(シャロー)に下りていれば、フェースが閉じる方向に回転します(ポジティブガンマトルク)。

逆に、スライサーの方は、ヘッドがグリップのアウト(爪先側)から下りてきてくることが多いので、
・ヘッドがインサイド(カカト側)に引き寄せられ、
・フェースが開く方向の「逆」パッシブトルクを受けてしまい、
スライスが助長してしまいます。

向心力と遠心力の綱引き

スライスを改善するためには、3次元的に(3軸に分解して)クラブを操作する必要があります。

・アルファトルク:グリップスピードを減速させて、ヘッドが目標方向に進む慣性力を与える。

・ベータトルク:切り返しで、下回り(後ろ倒し)方向にクラブを回すことにより、インサイドからヘッドをアタックさせる(それに合わせて、腰を左に回してインサイドイン軌道にする)。

・ガンマトルク:左手の猫パンチによりシャフトを回転させてフェースを閉じる。

ダウンスイングで、後ろ倒しにすることで(ヘッドがグリップよりもインサイド(カカト側)を通ることで)、パッシブトルクが働き、ヘッドがアウト側(爪先側に)放り出されるように動きます。

そして、インサイドからボールにアタックすることで、横方向(爪先方向)に遠心力が発生し、それに合わせてグリップを自分の体の方向に引っ張ります。

グリップを体の方向に引っ張り(スイングレフト)、遠心力に対抗するように向心力が発生し、ヘッド軌道に対して垂直方向に釣り合いがとれフェース面が安定します。

左手の猫パンチでインパクトすることで(親指を右に向けたままインパクトするイメージ)、フェース面が必要以上に閉じすぎない点も、このスイングのメリットの1つです。

ゴルフクラブは、インパクトでフェースが閉じるように作られている。

トゥ方向に遠心力を発生させ、スイングレフトでグリップを引き寄せると、フェースをスクエアに保ちやすくります(回転ブランコと同じです)。切り返しから後ろ倒しに(下回りに)スイングをすることで、インサイドアタックが可能となり、トゥ方向(爪先方向)への遠心力が発生します。

ゴルフクラブは、シャフトの右側(目標方向と反対側)が重くできております。

そのため、遠心力でヘッドが外側に放り出されるような力を受けると、シャフトの右側が重いクラブヘッドは、フェースが左を向くようにしなります。

後ろが重いクルマの方が、前が重いクルマよりも、雪道でスピンしやすいのと同じ原理です。